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食事を終えたおれ達は、しばらく雑談に花を咲かせていた。といっても、毎日会うのだからそんなに話す事もないのだが…
「じゃ、行ってきます。」
「「行ってきまーす!」」
「行ってらっしゃい。愛ちゃん、春香ちゃん。」
…おれは?実の息子と我が子同然の娘達との差にうちひしがれながら、玄関を出た。
「はぁ…さっきはお見苦しいところを…」
「いいって、気にしないで。」
結局食べ物を喉に詰まらせた春香ちゃんは、お茶を流し込み事なきを得たのだが…
「春香ちゃん、さっき様子が変だったよね…?」
「そ、そんな事ないですよ!」
「ねーねーけーちゃん、プリンはー?」
そんな話をしながら、やがて学園が見えてくる。おれ達の家から徒歩で行けるから、勝手がいい。
そして学園に近づくにつれ、徐々に春香ちゃんの口数が減っていく。やっぱり緊張しているのだろう、入学式というのはそういうものだ。
「大丈夫?春香ちゃん。」
「は、はいっ、大丈夫でふっ!」
大丈夫じゃないな。あの春香ちゃんが噛むなんて。ここは緊張をほぐすために何かしてあげた方が良いんだろうけど…
「大丈夫だよ春香!リラックスリラックス!」
「お姉ちゃん…」
「新生活に緊張しない人なんていないけどさ…春香なら、すぐに新しい学校やクラスにも馴染めるよ。そんなに緊張してたら、上手くいく事も上手くいかないよ?」
「…うん、わかった。私、頑張る!」
どうやら心配いらないみたいだな。愛もたまには、いい事を言うもんだな。
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