第1章

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「あら、気に障っちゃいました?」 「当たり前だろ!!親を侮辱されて怒らねぇ奴はいねぇだろ!?」 俺がまだ親父より遥かに未熟で、こいつの言うとおり、俺は西園寺家次期当主には相応しくないのかもしれない。 だが、親父のことをとやかく言われる筋合いはお前にはない。 そう思っていたが、次の瞬間笹原の口からはとんでもない言葉が発せられた。 「 ・・・不要な感情ですね」 「は?」 今こいつなんて言った? 不要な感情だと? 親を思う心が不要だと言うのか! 「感情があるからいろんなことに惑わされる。しかもほんの一時期の感情に流され馬鹿を見る。本当に、くだらない」 そう言う笹原はさっきより色濃い闇を映していて、今にも消えてしまいそうなくらいだった。 俺は笹原の手を引き自分の腕の中へ入れて抱きしめた。 やってから、俺は親を侮辱した奴に何をやってるんだと思ったが、止まらなかった。 「・・・何してるんですか」 笹原は俺の腕の中で暴れるが、俺が腕の力を強めると諦めたかのように俺に身を委ねた。 それが、無性に嬉しくて可愛いなんてことを不覚にも思ってしまう。 俺は、こいつをどうしたいのだろうか。 こんな感情を抱くのは初めてで、どうしたらいいのかわからない。 お前はこの俺に抱きしめられ、何を思っているのだろうか。 さっき不要な感情だと言ったように、こんなことをされても何か思う感情は持ち合わせてないのだろうか。 それは、すごく悲しいことだと俺は思う。 俺も他人にそんなに感情を表す方ではないが、あいつらといる時は普通に楽しいと思う。 笹原、衣玖は本当に、感情なんてものを持っていないのだろうか。 それじゃあ、こいつが人形みたいじゃないか。 今まで、こんなんでどうやって暮らしていたというんだ。 疑問に思えば思うほどたくさん出てきて頭が混乱する俺。 こんなの、俺じゃない。俺、らしくもないじゃないか。
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