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「ああ、ちょっとお前に用があってな」
新聞を広げて読みながら、いつものように俺を見ずに言う。
何か、嫌な予感がする。
「俺な、再婚することになった。だから、この家を売り払う」
ああ
「そんで、お前にはここを出て行ってもらう」
当たってしまった。
俺が一番怖れていた結果にとうとうなってしまった。
「あと、あそこの通帳には500万入ってる。好きに使うといい」
台所に近い机に一冊の小さいノートに指を指して言った。
「もう、ここには帰ってくるな。いいな」
「わかりました、今までありがとうございました・・・」
俺が礼を言っても、こちらに顔が向くことはない。
結局、あの人は最後まで俺を見ることも、認識することもなかった。
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