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本当に不思議な三人だった。
この広い瓦礫の山だけが残る絶望的な世界で、それでも笑って暮らす三人。
もはや、この世界でたった三人だけかもしれないのに。
「それは違うわ。白ウサギ」
白ウサギとは、アリスが私につけてくれた名前。武骨で硬い見た目に反した、かわいらしい名前。
アリスいわく、せめて名前は可愛くがその理由だった。
「私は信じてる。あなたやあの二人に出会ったみたいに、きっとどこかにたくさんの人達が生きているんだって」
アリスは私に微笑む。
「そうだな……。この世界にゃ、人はまだいるんだって俺様も思う。このマエストロ鑑定士様のことを待っているたくさんの人々がな」
「はん! 鑑定士の何を待っているってのさ! 待たれているのは、あたしの美貌さ!」
二人がアリスに同調する。
三人は信じていた。この絶望的な世界で、人に巡り会うことの“奇跡”を
笑い、泣き、怒りながら。時に歌い踊り、喧嘩をしながら。
“奴ら”の脅威から身を守りながら“出会う奇跡”を信じていた。
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