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「プラントだ」
「・・・!」
ふと耳に入った通信。聞き間違いかと思ったが確かに聞こえた。
「うぉっ! 何いまの? 幽霊!?」
タツヤがあからさまな動揺を見せる。腕を抱え身をよじらせている姿が想像出来た。
「・・・」
・・・なぜだろう、少し声の主が寂しそうにしている気がした。
遅れて、進行方向を確認すると、確かに数百メートルさきにプラントらしき機械が視認出来た。
「おいシロ! 喋るなら喋りますって叫んでからにしろっていってんだろ!」
怒鳴るグラントの言葉だけ聞けば、まるでペットにでも言っているようだった。
「・・・無理だ」
シロと呼ばれた男はあまり話したくないのか、短くそう答えた。
「え? あれってこっちの先輩の声だったの? 」
タツヤが少しだけ申し訳なさそうに言って、続ける。
「てか、シロって・・・え? 名前?」
「違う」
「そ、そうっすよねぇ」
タツヤが安心したように呟く。確かに、本当だったらグラントに飼われているのかと疑うところだ。
「あー、だってよ、ドイツ語だっけか? 白だろ? 大体ドイツの人間じゃねぇし偽名なのが丸わかりじゃねぇか。どうせ偽名ならシロでいいだろ」
グラントが面倒臭そうのに言うが、それはそれでどうだろうか。
「えー? ドイツ語で白っていったら・・・」
と、タツヤがそこまで言って思い出そうとしている・・・素振りをみせる。
「ヴァイス、ですか」
「あー、そう! それだよ、それ!」
タツヤが「一足先を越された」というアピールをする。が、正直どうでも良かった。
「あーそうそう、そんなやつだったよ。なんか格好つけたい年頃の少年みたいだろ? 」
グラントが古くからの友人の過去を面白おかしく語るようにして笑う。実際、この二人の付き合いは長いらしい。
俺は出撃前に見たヴァイスの姿を思い出す。
あまり健康的には見えない細身の長身で・・・あれ、それ以外白く霞んで全く思い出せない。
「でも、さすがにシロはまずくないっすか? 下手したら犬と勘違いしますよ」
確かにそうだが、さらっと失礼な事をタツヤが言う。
「そうか? そのなんとかってのよりシロのほうが覚えやすいじゃねぇか」
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