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「ヒロです」
「ヒロ! ヒーローみたいでいい名前じゃねぇか」
「は、はぁ・・・」
グラントが嬉しそうに笑う。 からかっているわけではなく、本当にそう思っているようだった。
今までも同じように呼ばれ、からかわれたことは何度も会ったが、このような反応は初めてで、なんだか気恥ずかしかった。
「んじゃ、ヒロ。 タツヤと一緒にプラントを占拠してくれ」
「えー? 俺達危険な役ですかぁ? こんな見通しのいいところで無防備なんて危なくないです?」
タツヤがあからさまな不満をもらす。 新人とは思えないふてぶてしさだ。
しかし、彼が言うように、プラントの周囲は多少の起伏はあるものの、身を隠すことのできそうな岩もない。
いや、正確には道の中央にあるプラントから南東に隠れることの出来そうな大きな岩が存在したが、わずかにプラントの範囲外。 つまり、占拠している間に身を隠すことは出来ない。
現在の位置からかなり遠方まで見渡すことが出来た。 起伏の激しい所、緩やかな所。 一面はほぼ砂だ。 所々身を潜めるのに十分な岩が幾つか転がっており、丸みを帯びた山型をしている戦場の中央部分となる岩肌が確認出来た。
(すでにあの岩陰に潜んでいない限り強襲の危険は少ないが、問題は狙撃か)
それも杞憂に思えた。岩肌は比較的緩やかな傾斜で、登れないこともないし、その場所からの狙撃が出来ないこともない。が、身を潜めるものがないためにそんなところから狙撃しようとは考えないはずだ。
「素人は黙って先輩の言うこと聞いてりゃいいんだよ。 おっと、いまは隊長だったか」
(今、思い出したのか・・・?)
「ちぇ、しょうがねぇ。 おい、いこうぜ、ヒーロー」
タツヤが馴れ馴れしく俺に話しかける。 確か彼の方が年下だったはずだが、そんなことを口に出すのも大人げないと思い「了解」と短く答える。
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