初陣

10/29
前へ
/48ページ
次へ
「そうなんすか? 俺よくわかんねぇけど、素人なんだし、先輩達に従うのが普通じゃないんすか?」 「傭兵ではないならな」 ヴァイスは長く話すのが苦手なのか面倒なのか、短く話す。 「裏切られる可能性があるっていうことですか?」 「そうだ」 「え? なんで?」 「その戦場での所属をマグメルに決められる傭兵は、今は仲間でも、次の戦場じゃ敵かもしれない。 そんな相手を信用するなってことだろう」 「あー、そっか。 俺の才能に嫉妬して潰しにかかるかもしれねぇもんな」 タツヤが冗談なのか本気なのかわからないことを言うが、触れないことにする。 「でもさ、俺は信じるよ。 皆悪いやつには見えねぇし」 「お前な・・・」 「そうか」 ヴァイスの声は心なしか嬉しそうだった。 「あれ? つうか先輩、どこにいるんすか?」 タツヤに言われて周囲を見渡すが、前方で敵機を警戒するグラントのブラスト以外見当たらなかった。辺りに隠れられるものは岩くらいしかないが。 「・・・?」 気付けば少し耳鳴りがする。 なぜだ? 「俺は狙撃係だからな」 「そっか。 そういや狙撃兵装でしたね」 タツヤのいう兵装というのは、俺達の乗るブラスト・ランナーに装備されている武器等の種類の事をいう。 兵装には四種類あり、強襲、重火力、狙撃、支援と分かれている。 簡単にいうと役割分担だ。 ヴァイスは狙撃。 最長の攻撃射程をもち、その威力は銃の性能と腕前があればブラストを一撃で行動不能にもし得る。 が、その反面、近距離戦闘には向かない。 ちなみにブラストには兵装だけでなく、自分に合った武器やパーツを選ぶことが出来る。 事実、新人である俺とタツヤは全てのボーダーが最初に搭乗すると言われている「クーガー」の「Ⅰ型」といわれる、ブラスト・ランナーとして初めて開発されたものだったが、ヴァイスとグラントは違った。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加