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が、実際の光景は予想外のものだった。
グラントは銃弾が発射されるタイミングにあわせるかのように、ブラストを急速転回させ、頭部を守るように腕を交差させていた。
腕部に銃弾が直撃し、衝撃を受けて数メートル押されて砂煙を撒きあげた後、停止した。
次いで、遥か前方。 先程までなにも見えなかった、高所にある岩場の上にブラストと思われる影が見え、それはゆっくりと崩れ落ちた。
「え・・・?」
理解出来ないことだらけで、俺は声を失う。
「いや、早いな。さすがだな、シロ」
「俺にはお前の方が信じられん」
全てを把握しているベテラン二人が、俺を置いたままお互いを称賛しあう。
「な、なにが・・・」
なにが起こったのかと問いたかったが、動揺を隠しきれずうまく言葉がでなかった。
それに、考えられることは限られていた。
まず、銃声が重なって聞こえたのは、気のせいではなく、敵とヴァイスの発射のタイミングがほぼ重なっていたのだ。
「・・・敵の位置が、わかっていたんですか?」
俺がヴァイスに問いかける。
「見えないのに、と思ったか?」
「でも、確かに見えなかったはずです」
そうだ。 先程までは確かにあの場所にブラストなどいなかった。 瞬間移動でもしない限りは。
(! ・・・いや、そういえば)
俺はシミュレーション期間に情報として得ていたある装置のことを思い出した。
「光学迷彩・・・?」
俺は僅かな知識を絞り出すようにして、問いかける。
「そうだ。 思い出すのが少し遅かったな」
ヴァイスがふっと笑う。俺がその装置のことを知っていたことを喜んでいるようにも聞こえた。
「まぁ、思い出せただけでも上出来だ」
グラントが笑う。
俺はタツヤのブラストを横たわらせ、グラントのもとへ近づいて行った。
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