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「さて、んじゃ逃げられないうちに仕留めちまうか」
「え・・・?」
急に、グラントの言葉から先程まであった暖かみのようなものが消える。そして、その目線の先には先程崩れ落ちた敵機の姿があった。
ボーダーは気を失ったのか、ブラストの体勢を立て直すこともなく、無様に横たわっていた。
仕留める。
温度を持たないその言葉が頭の中で繰り返し聞こえた。
そう、これは殺しあい。
それは理解しているつもりだった。 だからこそ、本当の危険を感じていたのだから。
「あ、あの、本当に?」
本当に、殺すのか。 と問いかけたかったが、俺の口からその先は出てこなかった。
「あ? 当然だろ? 戦闘不能と死亡とじゃ、点数に差がありすぎる。甘いこといって俺達の誰かが殺されれば、仲間が死んだ上に俺達の負けになっちまうかもしれねぇんだぞ」
その言葉はあまりにも現実的で、そこに慈悲はなかった。 ここに至るまでの、先の会話はなんだったのかと問いたくなる。
「勘違いさせてしまったか」
と、ヴァイスがすまなさそうに呟く。違う、そんな言葉が聞きたいんじゃない。
「これは殺しあいだ。知ってるだろ? 俺とシロだって、今は仲間だけどな、今まで何度もこいつを殺そうとしたし、俺も殺されかけた」
「で、ですが」
「『何も殺さなくても』だろ? 以前そう言った野郎がいたが、そいつのせいで部隊はほぼ全滅したうえに俺も死にかけて結果負けた。 それとも、お前はそいつとは違うってのか?」
「・・・っ!」
俺は言い返せなかった。 自分に実力がないのはわかっていた。 今のままでは足を引っ張るだけだということも。
(それでも・・・)
それでも俺は・・・。
「・・・まぁいい。お前の好きなようにしろ」
「え?」
「どうするのか、お前が決めろってこった」
言って、グラントは俺には敵機のもとへ行くように促す。
俺が・・・?
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