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その数キロ先に位置するこの場所にもまた、「それ」はあった。
緩やかな山の形をしたようなこの戦場、東西に別れたGRFとEUSTの部隊の出撃位置の後方に、先ほど述べたものほどではないが、ニュードがある。
これはその争奪戦。ニュードの防衛戦ともとれる。
本来、多量のニュードが採集できる場所では何回にも渡り戦闘が行われる。結果、勝利数や「ポイント」によって採集する権利を得ることが出来るが、今回の場合、少量の為に俺達の戦闘のみとなっている。
(つまり、負ければ全て俺達の責任ってことだ)
責任を問われる、と怯えているわけではなかったが、数ヶ月に渡るシミュレーションの後の初陣でこれとは、と、少し気負いする。
「あ? どうした新人、初めての戦場でびびったか?」
ふと、四人小隊となって歩く俺達の先頭を行く、今回の隊長の男から通信が入る。名は・・・グラントといったか。
「い、いえ、そういうわけでは・・・」
ブラストに搭乗して歩いていて、表情なんてわかるわけのに、なぜ俺のことを気にしたのだろうかと疑問に思いながらも、俺は返事をする。
「なんで表情も見えないのにそう思ったのか、って感じだな」
続けて、グラントが言う。心なしかその口調は楽しそうだった。
(この人はエスパーかなんかか?)
そう思うと同時に、自分の周囲を確認する。が、思考を読む装置のようなものは見当たらなかった。そんなものがあれば頭に直線接続されていそうだが。
「はっはっは! 何となく、だ」
グラントは笑う。これから戦闘が行われるとは思えないほど豪快に。
それは出撃前に見た褐色の肌、短い白髪と筋肉質な体の彼が見せた笑顔を容易に思い出させた。
「はぁ・・・」
俺は返事ともため息ともとれる声を漏らす。
(色々と不安になってきた・・・)
しかし、同時に先程出撃前にあった緊張は少し落ち着いていた。まさか、とは思うが。
「しょうがないっすよ、こいつ初めての戦場なんすから」
菱形にならんで歩く俺達の最後尾を歩く少年が緊張を感じさせない口調でグラントに向け言う。
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