1 橘和美

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荒涼たる風が吹く四月下旬ーー 東都防衛学院の屋内訓練所では、学内春季合同訓練が行われようとしていた。 中学部の生徒が1年生から3年生まで参加する最初の大規模訓練で、この日はクラス最初の分隊行動でもある。 「準備はいい?」 市街地フィールドの南側には、第55分隊が待機していた。 隊長の橘和美が隊員に向かってきいたのだ。 「いつでもいいぞ」 副隊長の遠藤長太郎が返事した。 和美が深呼吸すると、まっすぐな長髪が乾燥した砂漠の風でたなびく。 ーー開始の時間が、もうすぐそこまで来ていた。
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