1 橘和美

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(君たちは仮進級しただけだよ) ふと始業式後の担任の言葉が思い出される。 まだ肌寒く薄暗い2年2組の教室、夕闇に包まれた帰り際の出来事であった。 (君を第55分隊の隊長に就任するよ。その分隊で、今度の合同訓練に参加するんだ) 第55分隊の名簿をもらい和美は愕然とした。 そこに載っていたのは、退学寸前の落ちこぼればかりだったのだ。 (この訓練で『死んだ』隊員は退学処分だ。退学したくなかったら、優勝して生き残りなさい) 270名いる中等部の軍人の中で、全員が生き残るーー それは和美にとって、宝くじの一等が当たるくらい難しいことだった。
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