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何が普通じゃないって、マリが正解を当てる時、迷いがないんだ、全く。
きっと本人はごく自然に答えてるみたいだけど、その迷いのなさはマリの細々した様子から分かる。
うーん、と考えるフリをするわりにはっきりと出る答え。
始めから見当がついているかのように、視線は石の握られている方へ流れる。
そして、俺はまた、こうも考えていた。
『この正解の連続は、リサさんの記憶力に近い感じがする』と。
本人が気が付いているのか、無意識なのかは分からないし、あくまでも俺自身の感覚だから確実なことは言えないけど、マリの中に確実にここに来る前までは持っていなかったものが存在することを感じている。
石当てゲームに飽きたのか、マリは「もういいでしょっ」とコロンと身体を横に倒した。
マリの身体の向こう側に俺と対局して、ヨウコの他に2人の人間が見える。
一人はおさげ髪と時代遅れの分厚いメガネが特徴的な女の子。
そしてもう一人は、あまり目立たないけどダルそうに宙をボーっと眺める男。トレーナーのようなものを着ていて、髪もボサボサで、一言でこの男をのイメージ表すなら、『ニート』だ。
どちらも、前の騒動の中生き延びた人達で、確か俺たちが元々の奴隷部屋に連れてこられた時にいた群衆の中にいた2人だ。
あまりこちらに干渉してこないことといい、無粋な表情といい、目の前で射殺されたメグミさんに比べたらこの2人のコミュニケーション能力の低さを感じる。
正直、社会で生活していくには苦労しそうな2人だけど、ここじゃちゃんと生きている。
こちらに背中を向けるマリと、そんな2人を見て俺はこの地下で生きていくには常人には無い何かを持たなければいけないのだと、どこか悟っていた。
床に身体を付けるマリが急に「誰か来る」と言った。
「え、誰? 」
「分からない、けど、足音が聞こえる」
その時、バンッと部屋の扉が勢いよく開いた。
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