序章

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「ねぇ、お願い……。」 「だーめ!!」 このやり取りを 何万回繰り返しただろう。 私は家に帰りながら、隣を一緒に歩いている友だちの方を向く。 「なんでぇー?いいじゃん!いつも見せてあげてるじゃんノート!!」 「うちはいいけどマリはだめ!!!」 「ええぇー!!なんでそんな事言うのよー」 マリと呼ばれ、この日委員会の用事で珍しく欠席した授業のノートを友だちに見せるよう頼んでるのが私。 そして……。 「なんでって? そりゃ世界はうちを中心に回ってるから」 そう言ってニヤッと、どや顔でこっちを見ているのが私の親友のナナ。 私たちは今年で高校3年生となり、ナナと友だちでいるのも12年目となる。 「今日は珍しく一睡もせずに授業出てたんだよ?こんな貴重なノート見せれないよ」 ナナはそう言いながら、ノートにスリスリと猫みたいに頬ずりしてる。 「むぅ……。あ、そういえばさぁ、来週確か、1限目数学だよね………」 ギクッとナナの肩が上がる。 ―-ニヤッ。 「ナナ……100%寝る気でしょ? ノート見せないよ!?」 「うえぇー! 1限目の授業のノート見せてくれないとかうち生きていけない~」 ナナは朝が弱いのだ。 つまり必ず1限目にある数学で、いつも居眠りしてしまうナナがテストで点数を取れてるのは、いわば私のおかげである。 この"1限目"という武器を手にした私は、ナナに対して最強なのである。 いつも押しの強いナナも、この時ばかりは弱腰。
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