後々と恐々

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扉が開いた先に立っていたのは、 思わず見とれるほど綺麗な『男の人』。 男は一言も話さずに、一歩部屋に踏みいった。 男が身に纏う雰囲気は独特で、その美しさに目と言葉を奪われる。 部屋には私達5人しかいないにもかかわらず、男は広い草原を見渡しているかのように隅から隅まで見わたし、 「少ない」と初めて喋った。 男の声は抑揚がなく、無気力。 男が何か動作を起こすたびに揺れる髪は男の人にしては長く、毛先はさらりと彼の肩を撫でる。 さらに、男の髪色は全体に白銀に近く、毛先に行くほど藤の花のように綺麗に紫色に染め上げられている。 表情は少ないが、そのニホン人離れした端麗な顔立ちに目が離せない。 興味と警戒の視線が注がれる中、男は初めて私達の方へ視線を合わせた。 (うわ、瞳が青い) 雪のように白い肌はなめらかで、女の私ですら羨ましく感じる。その美しさは思わず手を伸ばしてしまいそうになるほどで、見られていると思うと恥ずかしさすら感じる。 私たちはいつの間にか、ふらっと部屋に入ってきた初めて見る男の不自然さよりも、彼の美しさと言い換えることのできない雰囲気に自然と彼のことを受け入れてしまっていた。 爽やかな空気の中、男はふわりと微笑む。 そして、端麗な男は言った。 「うんこみてーなお前たちに、命令。オレに、身体を差し出せ」 爽やかな笑顔から、クズみたいな言葉が飛び出した。
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