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――私の頭の中の『嘘つきセンサー』は特別反応していない。
巳坂さんたちが何か目的を持ってここに来たことは間違いないみたい。
白衣の人との掛け合いで忘れそうだけど、巳坂さんは確かに言ってた。「お前達が欲しい」と。
欲しい……? もしかして、また犬養さんの時みたいにここから誰か連れて行かれるのか。
「……っい、おい。マリ、眉間の皺深すぎ。今に深すぎて、そこ中心に顔埋まっちまいそうになってるけど」
ゴウ君の顔面がニョキッと視界いっぱいに移る。
反射的に顔を背けると、「拒否りすぎだから」と笑われてしまった。
「お前また変なこと勘ぐってるだろ。色んなこと考えすぎて、いざって時に動けないと危ないぞ」
その形のいい眉を少し釣り上げて、心配な気持ちを強めの言葉でしっかりと私にぶつけてくる。
友の偽りのない言葉に、変わらない安心を感じる。
「だね。ゴウ君みたいに、私も頭の中空っぽにしとく」
「いやそれ完全に悪口」
ゴウ君の笑い声が快活に拡がる。
「ごめん」と言って一緒に笑うと私も身体から余計な力みが抜け、これからのことを難しく考えるのを止めた。
巳坂さんたちの目的も気になるところだが、その日はその後誰かが訪問してくることもなく平凡に時間が過ぎていった。
その後も一夜一夜と過ぎていき、巳坂さんはその美しさもあってまるで夢の中の住人のような思い出へとなっていった。
半分幻想になった巳坂さんともう会うこともないのかと考えていたが、再会は考えていたよりもすぐに来ることになった。
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