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そう言うと、三島部長はどこかへ歩いていってしまった。
その背中を少し見つめて、再び力なく俯いた。
首筋に冷たい感触。
それに驚き、ガバッと体を起こした。
冷たい物の正体は、ペットボトルのお茶。
三島部長はどこかで買ってきてくれたようで、私にお茶を差し出してくれていた。
「ありがとうございます。」
お茶を受けとると、バッグの中から財布を取ろうとした。
「おいおい、お茶の1本くらい奢らせてくれよ。」
「はい。じゃあ、ご馳走さまです。」
お茶は冷たくて、体に染み込んでいく。
「大丈夫か?」
「はい。おかげさまで。」
「あ、いや…。体調もなんだが、相沢部長のことも…。」
「え?」
「4月までは、君たちの上司だったろ?今日はみんな、動揺していたようだし。」
あぁ、そういうこと。
やましいことがあるせいか、変に反応してしまった。
「物腰が柔らかい人だったんで、みんな慕ってましたから。いきなり地方に…。左遷、なんですよね?」
「俺からは詳しいことは言えないが、そう思ってもらって間違いないとだけ言っておく。」
「そうですか。」
それから三島部長は私の横に座ったまま、一緒に何本もの電車を見送った。
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