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酷いヤツ…。
私だって、相沢部長を利用したのに。
あの人の優しさに、甘えたのに…。
私はその場に座り込み、泣きそうになるのを必死で堪えた。
少し落ち着いてから、ゆっくり歩いてオフィスに戻った。
なかなか戻ってこなかった私を、湖穂が心配していた。
「先輩、大丈夫ですか?随分席離れてましたし、顔色も良くないですよ。」
「大丈夫よ。ごめんね、心配かけちゃって。」
今は、仕事中。
余計なことは考えるな。
集中、集中。
目を閉じて自分に言い聞かせ、深呼吸をして目を開いた。
そして仕事にかかろうとしたとき…。
「小谷さん、いいですか。」
声をかけられ、キーボードを打とうとした手を止める。
見上げると、越山君が立っていた。
「どうかした?」
「これなんですけど、数字が全然違うんですが。」
あっ!
一桁間違えてる。
それだけじゃなく、数字を入れる場所が1マスずれてるんだ…。
こんなミス、何で…。
そう言えば、見直ししてなかったかも。
じゃあ、これ以外のも間違えてる可能性がある。
「ごめんなさいっ!こんな初歩的なミス。すぐに直すから。」
私は座ったまま深く頭を下げた。
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