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「次に、満塁ホームランでサヨナラになる点差で最終回を迎えたのも奇跡だし、丁度よく4番バッターが打席に入ったのも奇跡だ。そもそも、あんな小さいボールを金属バットで当てる事すら奇跡。そうか、野球は奇跡のスポーツでもあるんだな」
一人で早口に捲し上げる彼。このまま、演説でも始まるんじゃないかとすら思えてしまう。
僕は大袈裟に反応してみせることで軽くあしらい、話の腰を折る。
「それで、何が言いたいんだい?」
「……つまり、だ」
まだ話したかったのに……。と残念そうな顔つきをする彼を壁越しにイメージする。少し、気分が良くなる。
「つまり?」
「俺は今、今の今、この壁の向こうで奇跡が起こっていると考えている」
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