見えない壁

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「突拍子の無いことを言うね。君は」  おののきながら僕は返す。驚きを隠せない一方で、彼の底が見えない発言のエンターテイメント性に少し恐怖も感じ始めていた。  彼のその深淵みたいな、奈落のような知識と語彙の量は、一体、どこで培われた物なのか。  そもそも、初対面の人間(仮定)に対してどうしてこうもフレンドリーに喋られるのか。 「突拍子が無いから人生は面白いんだよ。生涯死ぬまで乗ってるなら、エスカレータよりも行く先不明のワープ装置の方がいいだろ?」  行く先不明とは、また無責任なワープ装置だ、とケラケラ笑う。  彼の話は制御の効かない機関銃のように続く。それこそ、その口が力尽きるまで。 「とにかく、俺は、この壁を隔てたら、人ではない何かがあるんじゃないかとふんでいる」
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