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(那珠菜って、確か……)
思い当たる節でもあるのか、男は項垂れる男へ歩み寄る。
「ねぇ、お兄さん。誰か探してんの?」
声を掛けられ、男は眼鏡の位置を直して顔を上げる。
そして、そこに居た外人の男に目を丸くする。
「え……俺…?」
自分に話しかけたのか?
と尋ねれば、外人の男はにこりと微笑み頷く。
「お兄さん以外に居ないでしょ」
流暢な日本語を操りくすくすと笑う外人に、男は苦笑する。
「で、誰か探してんの?」
「あ…あ、えぇ…。昔の…知人を」
「名前は?」
「神田那珠菜。
――すみません、見ず知らずの人に聞いても知っているはずなんてないのに、こんなことを…。恥ずかしいところも見られてしまいました」
苦笑して立ち上がる男に、外人の男は口元を緩める。
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