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「あん、そんなに触られたらお姉さん困っちゃう」
その瞬間に青年は胸に埋まっていた顔を開放し、目にも留まらぬ速さでサオリとの距離を取る。
自分のやったことを恥じているのか、顔がみるみるうちに耳まで赤くしてしまう。
そんな光景の一部始終を見ていた茶髪の少女は、透き通った平淡な声でボソッと呟く。
「不潔……」
少女が言うのと、青年が勢いよく土下座するのはほぼ同時であった。
「ご、ごめんなさい!!」
額を地面に擦り付けんばかりの、なんとも立派な土下座。
こんな土下座をサオリはみた事がなかった。
彼女は少し罪悪感を覚えたのか、苦笑しながらフォローを入れることにした。
「頭あげてもいいぞ少年よ、胸くらい減るものでなし」
が、青年は頑として受け入れない。
どこか忠実な飼い犬のような、そんなイメージが見受けられた。
その様を見て、サオリの脆弱な罪悪感は吹き飛び、再び悪戯モードへと移行する。
「君みたいな可愛い子ならむしろ大歓迎?」
青年の顎を無理矢理引き寄せ、艶っぽく言う。
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