~ability of Saori~

7/12
前へ
/223ページ
次へ
「おぉ~ルーシー!!会いたかったよぉぉ」  手にしていた紙袋をピカピカにぶちまけ、中央テーブルに優雅に座る闇色のドレスの少女へと迫っていく。  サオリが浮べるは、満面の笑み。  すこし涙さえ浮べている。  と、そこへルシエィドとサオリの間に、割り込んでくる者が一人。  血のような赤髪を炎のように逆立て、長い襟足はゴムでひとつに縛っている、モノクロ調のブレザーを羽織った青年。  額で光るゴーグルが目立つ青年の名は、『ゼツキ=マテイル=キルウィザード』、ルシエィドの契約鬼である。 「てめぇサオリ、人のモンに手出そうとしてんじゃねぇぞ」  獣のような威嚇、人にはありえぬ長い犬歯を剥き出す姿は獣そのものである。  だがそんな姿にも動じないのがサオリだ。  突撃する足を止め、ゼツキと対峙する。 「フッフッフ、軽いスキンシップですよゼッツン」 「だぁれがゼッツンだ誰が!!」 「つれないねぇ~、お姉さん悲しいよゼッツン」 「俺のが年上だろうが!!てかゼッツン言うなっつの!!」  嘘泣きをするサオリに、ゼツキは吼えるが、ただ室内に声が響くだけだ。  効果はあまりない、いや皆無である。  そんなやりとりに終止符を打ったのは。 「ゼツキ、ちょっとウルサイわ」  彼の契約主のルシエィドであった。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

189人が本棚に入れています
本棚に追加