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「おぉ~ルーシー!!会いたかったよぉぉ」
手にしていた紙袋をピカピカにぶちまけ、中央テーブルに優雅に座る闇色のドレスの少女へと迫っていく。
サオリが浮べるは、満面の笑み。
すこし涙さえ浮べている。
と、そこへルシエィドとサオリの間に、割り込んでくる者が一人。
血のような赤髪を炎のように逆立て、長い襟足はゴムでひとつに縛っている、モノクロ調のブレザーを羽織った青年。
額で光るゴーグルが目立つ青年の名は、『ゼツキ=マテイル=キルウィザード』、ルシエィドの契約鬼である。
「てめぇサオリ、人のモンに手出そうとしてんじゃねぇぞ」
獣のような威嚇、人にはありえぬ長い犬歯を剥き出す姿は獣そのものである。
だがそんな姿にも動じないのがサオリだ。
突撃する足を止め、ゼツキと対峙する。
「フッフッフ、軽いスキンシップですよゼッツン」
「だぁれがゼッツンだ誰が!!」
「つれないねぇ~、お姉さん悲しいよゼッツン」
「俺のが年上だろうが!!てかゼッツン言うなっつの!!」
嘘泣きをするサオリに、ゼツキは吼えるが、ただ室内に声が響くだけだ。
効果はあまりない、いや皆無である。
そんなやりとりに終止符を打ったのは。
「ゼツキ、ちょっとウルサイわ」
彼の契約主のルシエィドであった。
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