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「渡部ってどっか引っ越すらしいぜ。」
「渡部って・・・あぁ、あれかすべてが惜しいってやつ。」
「そうそう。まぁだからなんだって話だけどさ。」
周りの雑音の中、自分の名前が聞こえ話に耳を傾ける。
けれどまぁ、噂話で自分に都合のいい話なんて聞けたためしがない。
そりゃ、私なんて別に可愛くも明るくもないし。
「全てが惜しい。」
口の中で復唱してみる。
悪口ではないだけマシか。
少し卑屈になっている自分に嫌気がさす。
「美華ちゃん、引っ越すんだって?」
急に後ろから声をかけられビクッとする。
振り向くと見るからにモテそう、いや実際にモテているクラスの女の子が立っている。
「あっ、うん。そうなんだ・・・。」
特に気の利いた返事が思いつくわけでもなくありきたりな返事。
「寂しくなっちゃうね。」
そう言って本当に寂しそうにする彼女。
演技なのか否か。そう考えてしまう自分にうんざりする。
「わざわざありがとう、元気でね。」
当たり障りのない言葉を残しそっとその場を後にする。
これ以上あの子と喋ると、自分がどんどんいやになる。
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