1.見ざる聞かざる忘れ去る

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『女の子はみんな可愛くなれる。』 テレビCMで、キラキラした女性たちがそう謳っている。 けどやっぱり、基礎が違うんだよ。基礎が。 「やんなっちゃうなぁ、本当に。」 どんどん卑屈になっていく自分が最近大嫌いだ。 努力は報われるなんていうけど、すべての努力が報われてたら世の中みんな成功者になってるはず。 そんな風に考えてしまう自分が嫌で嫌で仕方がなかった。 「・・・可愛くなりたいなぁ。」 本心がポツリと漏れる。 こういう考えが浮かぶと必ず過去の汚点を思い出す。 あれはざっと1年前。 私は片思いをしていた男の子に告白をした。 「あの、ずっと好きでした。優しいところも笑顔も全部。良かったら付き合ってください!」 一世一代の大告白。すべての毛穴から汗が出てる気がした。 それに、勿論この告白が必ず上手く行くなんて思っていたわけでは無い。 そこまでポジティブだったら今ここまで腐っていないだろう。 「あのさ、お前なんて呼ばれてるか知ってる・・・?」 返ってきたのは肯定でも否定でもない、予期せぬ言葉。 「えっ・・・?」 用意していた全ての言葉が使えない。 とぼけた返答になってしまったのを今でも鮮明に覚えている。 「パーフェクトB級。すべてが惜しいってこと」 「はぁ・・・」 「だからその・・・ごめんな?」 そういって立ち去った彼の後姿は多分一生忘れないだろう。 私は衝撃のあまりしばらくその場に棒立ちだった。
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