1.見ざる聞かざる忘れ去る

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「まぁ、決めるのは本人だからこっちの髪型がしたいってのならその通りになるように全力は尽くすよ。だから、無理せず好きな方を選んでね。」 「あの、こっちの方でお願いします。」 「本当に、いいの?あれは一種の提案だから無理しなくてもいいんだよ?」 「いえ、こっちの髪型も可愛いんでよろしくお願いします」 「はい、お任せください」 私は提案された方の髪型にすることに決めた。 プロが言ってるんだ、間違いないだろう。 そう思いながら器用に切られていく伸ばしっぱなしだった自分の髪を茫然と眺める。 やっぱりあれだ、近くの散髪屋とは違うな、美容院は。 別に散髪屋を冒涜しているわけではさらさらないがそう思う。 あっという間に切られセットされて鏡の中の自分に少し驚く。 「うわぁ、可愛い。」 無意識に自分自身をほめる。この感覚はいつぶりだろう。 CMの殺し文句も捨てたもんじゃないなとちょっと思う。 「ドライヤーで乾かす時に前に持ってくるようにして少し内側にねじってするだけだから自分でもできるよ。」 美容師さんは実践しながらこのセットの方法を教えてくれる。 ちょっとでも再現できるように私は全力で頭に叩き込む。 「自分で提案していうのもなんだけど、とっても似合ってる。」 「あっ、ありがとうございます。」 少し照れながらも今は素直に受け入れることが出来た。 そして軽い足取りで家へと帰った。
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