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永倉は、何とも言えない悲痛な表情で、静かに座ったままの凛を見つめた。
すると、凛は懐から、携帯用の筆記具と、紙を出すと、すらすらと筆を滑らせた。女らしい流麗な『文字』を書く。
凛
【勿論、全ての人がそうではありませんが。私達、『言霊遣い』を『人間』だとは、認めて下さらなかったのでしょう。】
凛の伏せた瞳を縁取る長い睫毛が、凛の顔に影を作る。
ー何故、『言霊遣い』と言うだけで、凛一人が辛い 思いをしなければならないのかー
永倉の表情は、如実にそう物語っていた。この黒玻璃の瞳に、感情の色を灯したい、そう願うほどに………。
斎藤
「………それで、この二人の処遇は、如何様(イカヨウ)に?」
今まで、一言も口を挟まなかった斎藤が、ここで漸く、言葉を発した。
近藤
「ううむ。ここまで、詳しい事情を話させておきながら、知らんぷりをするわけにもなぁ………。」
藤堂
「いいじゃん。二人とも、ここに置いてやろうよ。だって、このままじゃ、凛が可哀想すぎるよ!」
永倉
「俺も、平助に賛成だ。助けようと思ったのは、俺だし。ここまで来て、『ハイ、さよなら』ってのは、薄情すぎるだろ?」
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