ー 行き倒れの二人 ー

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凛を呼び捨てにした藤堂に、抗議しようとした鴉だが、凛に止められたので、渋々、口を閉ざした。 井上 「確かに、二人を放り出すのは、不憫だねえ。」 井上が、眉を寄せて呟く。それに便乗するように、原田が言った。 原田 「間者じゃないなら、置いてやってもいいと思うぜ。さっきの話からして、まさか、この二人が『恩を仇で返す』ような真似はしないだろ?」 素直にそう思っているのか、皮肉なのか判断しづらい言葉を紡ぐ原田。 沖田 「間者だったら、僕が斬りますから、ご心配なく。」 変わらぬ笑みを浮かべたまま、そう言ってのける沖田。 山南 「『御堂家』は、どの派閥にも属さぬ家柄。『尊王』も『佐幕』も関係ありませんからねぇ………。」 にっこりと、穏やかな笑みを浮かべ、何故か土方を見る山南。 現時点で、肯定意見を出していないのは、彼と斎藤だけだ。土方が頷きさえすれば、斎藤に否やはない筈だ。 土方 「………既に、多数決で負けてんだろうが。てめえらの好きにしろよ。それでいいだろ、斎藤?」 根負けしたのか、盛大な溜息を吐いて、承諾した土方が、斎藤に取り成すように、問い掛けた。
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