ー 筆談少女と壬生の狼 ー

2/21
前へ
/199ページ
次へ
ー壬生浪士組屯所 一室ー ゆっくりと意識が覚醒してゆく。起き上がった凛は、二、三度軽く頭を振った。 壁に寄り掛かるように座り、眠る従者。だが、頭上には見慣れぬ天井。 凛 (そう言えば、浪士組の方に、助けて頂いたのだった。) そっと、目を閉じれば浮かぶのは、全てを失う予感の記憶。 朱い記憶ーその中に響く、優しかった母の声。 嵐 『貴女の声は封じられる。貴女が本当に必要とする時まで………。生きなさい、凛。貴女が貴女の“運命”に出逢う時が、必ず来るから………』 凛 (私の“運命”………。『言霊遣い』として?それとも、『御堂 凛』個人としての?) ー凛が思考に耽り始めた時、聞き慣れた声が、割って入った。 鴉 「ん?あ、おはようございます、姫。既にお目覚めだったのですね。」 ーバタバタバタッ 藤堂 「お~い、凛~。起きてるか、入るぞ~。」 永倉 「待て、平助。まだ、寝てるかも知れないだろ?返事があってから………。」 原田 「何、言ってんだよ、新八。あの子、喋れないじゃん。どうせ、あいつが代わりに、返事するだろ?」 朝っぱらから騒がしい、通称『三馬鹿』。別名、『筋肉脳部隊』。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

186人が本棚に入れています
本棚に追加