ー 筆談少女と壬生の狼 ー

3/21
前へ
/199ページ
次へ
ーズカズカ、バンッ 鴉 「朝から、何と言う騒がしさなんです?大体、許可なく、姫の寝所に入ろうとは、言語道断!」 三人が襖を開けるより、早く鴉が開け、一喝した。 朝から騒がしい上、無断で凛の部屋へ入ろうとした無礼者達。 もしも、永倉がいなければ、『無礼打ち』にされていたのかも知れない。 永倉 「おはよう、姫さん。昨夜は、よく眠れたか?」 優しく問い掛ける永倉に、凛は小さく頷いた。相変わらず、黒玻璃のような瞳だが、僅かに感情が顔に出ている。 永倉は、そのことに密かに安堵した。助けた手前、この二人のことを、気に掛けるべきだと思っている。 永倉が自分たちを助けてくれたことに、凄く感謝しているらしい凛は、鴉に『永倉に対して、礼を尽くすように』と命じたと聞く。 その為、鴉は永倉にだけは抗議することはない。 永倉は凛を『姫さん』と呼んでいるので、特に抗議する理由もないのだが………。 ー鴉にとっては、凛が第一。七代前から『御堂家』に仕える彼は、凛を酷く大事にしている。 彼の『真名』を奪い、『従者』とした最初の主。その主より、七人目である凛の方が、大切なのだ。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

186人が本棚に入れています
本棚に追加