186人が本棚に入れています
本棚に追加
近藤の言葉に頷き、ふたりは来た道を戻って行った。
永倉
「そっか………。あの子、喋れないのか………。」
沈んだ表情で、呟く永倉。助けた手前、二人のことを、一番気に掛けているのだろう。
本音を言えば、あの二人を、まだ休ませてやりたかった。声を失うほどの目に遭ったのなら………。
山南
「失礼します、連れて来ましたよ。さ、入って。」
スッと襖が開き、あの二人が姿を現した。
先程は、全く気付かなかったが、二人共、不思議な雰囲気を纏っていた。
少女は、市松人形の如き容貌をしている。
前髪は眉の上、横と後ろは腰の上で切り揃えられた黒髪と、黒玻璃のような瞳。白い肌に赤い唇。
年の頃は、十六、七。
男の方は、高い位置で結われた金色掛かった茶髪に、褐色の肌、翠玉の瞳を持つ、精悍な顔付きをした青年だった。
年の頃は、恐らく、沖田と同じくらいだろうか。
改めて見ると、二人共、そうそういない容貌だ。
ーそして、恐らくは、二人共『一般人』では有り得 ないだろうー
少女は、まるで『この世のものではない』ような、神秘的な気配を纏っている。
最初のコメントを投稿しよう!