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男の方も同様だ。
先程からの所作や体捌きから見て、少なくとも一般人ではない。
何より、この男からは、気配らしきものを、一切感じないのだ。ここに、こうしているのが、嘘みたいに………。
青年
「姫、御手をどうぞ。大丈夫ですか?お辛ければ、直ぐに仰って下さい。」
少女は青年の手を取り、静かに腰を降ろす。彼女が動く度に、さらさらと黒髪が流れる。
こちらを見据える少女の瞳は、やはり黒玻璃のようで、何の感情も読み取れない。
よく見ると、彼女の喉の部分には、奇妙な紋様の刺青らしきものが見えた。
近藤
「では、まず、君たちの名から伺おうか?」
近藤の言葉に、キッと青年が鋭い視線を向けた。
青年
「貴様…、姫に対し、そのような態度、無礼であろう?!」
その青年の態度に、騒めくが、少女が手で青年を制した。
青年
「ひ、姫………ですが!………御意、申し訳ありません。」
青年は、彼女と会話を交わしているようにも見えるが、傍から見ると、独り言のようにしか見えない。
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