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先程まで、人形のようだった凛が、可憐に微笑んだことに驚いた。
しかも、その微笑みは、花の蕾の如く、清楚で可憐で愛らしい。
山南
「よろしいですか。鴉殿と仰いましたね。何故、『御堂家 次期当主』凛殿と貴方が、門前で行き倒れていたのか?その経緯を教えて頂きたいのですが………。」
いち早く、気を取り直した山南が、鴉に事情説明を促した。
鴉
「鴉、と呼んで下さって、結構。………『御堂家』は、もうない。滅ぼされたんですよ!私は、ご当主『嵐(ラン)』様に姫を託された。姫を連れ、逃げるのが精一杯だったんです。」
鴉は顔を歪め、拳を握り締めた。爪で傷付いたのか、ぽたぽたと血が滴る。
ー全員が、絶句した。そこまで、壮絶な事情があるとは思ってなかったから。
先程、凛は永倉に笑い掛けた。十六、七にしか見えぬ娘が、生家を滅ぼされながら、恩人に笑顔を見せられるのか。
ーなんて強い娘なのだろうー
名に相応しく、凛とした佇まい、毅然とした姿勢。彼女の、感情の籠もらぬ瞳と声は、その所為なのか?
原田
「ちょっと、待てよ。『言霊遣い』ってのは、すげえ力が、あんだろ?そんな簡単に滅ぼされるものなのか?」
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