第1章

18/18
428人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「何がいい、恋夜?欲しいものを言ってみろ」 長い指先で少年の栗色の髪を弄び、高見沢は促すように恋夜の顔を覗きこんだ。 「……翔(かける)……警察に顔がきくって言ったよね?」 警官に連行される若い男の顔を脳裏に思い浮かべ、恋夜はたぶんに甘えを含んだ表情で高見沢を見た。 「ああ。たいていの願いは叶えられるぞ」 高見沢は上機嫌で、優しく恋夜の髪を撫でた。 恋夜が下の名前で呼ぶと、高見沢は機嫌がよくなるのだ。 「……大物が釣れるかも知れない」 まどろむような表情で寝返りを打ち、恋夜はクスリと笑った。 「……?何の話だ?」 「……何でもない」 肌触りのいい毛布に細い肩を埋め、恋夜は妖樹の喜ぶ顔を想像して、心が浮き立つままに微笑した。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!