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「何がいい、恋夜?欲しいものを言ってみろ」
長い指先で少年の栗色の髪を弄び、高見沢は促すように恋夜の顔を覗きこんだ。
「……翔(かける)……警察に顔がきくって言ったよね?」
警官に連行される若い男の顔を脳裏に思い浮かべ、恋夜はたぶんに甘えを含んだ表情で高見沢を見た。
「ああ。たいていの願いは叶えられるぞ」
高見沢は上機嫌で、優しく恋夜の髪を撫でた。
恋夜が下の名前で呼ぶと、高見沢は機嫌がよくなるのだ。
「……大物が釣れるかも知れない」
まどろむような表情で寝返りを打ち、恋夜はクスリと笑った。
「……?何の話だ?」
「……何でもない」
肌触りのいい毛布に細い肩を埋め、恋夜は妖樹の喜ぶ顔を想像して、心が浮き立つままに微笑した。
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