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熱いシャワーを浴びて、恋夜がリビングルームに入っていくと、液晶テレビに深夜のニュースが流れていた。
《……昨日の午後8時過ぎ、名古屋市中区大須の大須観音付近で、男が日本刀のような物をふり回し……幸い、怪我人はなく……銃刀法違反と公務執行妨害の現行犯で逮捕されたのは……》
何気なく画面に目をやった恋夜は、思わず「あっ」と小さく声をあげた。
手錠をかけられて連行される若い男には、見覚えがあった。
「あいつ……!」
画面に見入って小さくつぶやいた恋夜を、高見沢が訝し気にふりむいた。
「知ってる奴か、恋夜?」
「……まあね。ちらっと見かけただけだけど」
もういつもの生意気な表情に戻って、恋夜は軽く肩をすくめた。
高見沢の瞳が、サングラスの奥で光る。
「見かけた?どこで?」
「水晶玉の中」
高見沢が「は?」という顔になる。
が、すぐに冷やかな表情に戻り、テレビを消すとサングラスをはずして立ちあがった。
サングラスをテーブルに置くコトリという小さな音が、長い夜の始まりの合図だと、恋夜も経験から知っていた。
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