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「……嘘をつけ」
喉に絡んだ声で言って、高見沢は恋夜の華奢な手首に手錠を嵌め、細い支柱に繋ぎとめた。
「嘘つきには罰を与えてやる」
口実などなくても、高見沢は己れの嗜好のままに夜ごと恋夜を鞭打つのだが、時折こんな風に無理やり口実をこじつけることがあった。
試すように鞭をしならせる音が背後で響き、恋夜は痛みの予感に怯えて小さくあえいだ。
シルクのパジャマを素肌に纏っていたけれど、高見沢の鞭は一面鋼の鋲に覆われていて、パジャマの上からでもかなりの痛みがあった。
それに……寝室に足を踏み入れた時から黒聖香の鎮痛作用が切れて、夜ごと鞭打たれた背中の傷が、灼けつくように疼いていた。
残酷な戯れの始まるこの瞬間は、恋夜はいつも哀訴したくなる。
だが、哀訴しても無駄なことを知っていたので黙っていた。
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