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「ご褒美」を、まだ高見沢にねだってはいない。
あの男を、あっさり出してやるつもりはなかった。
裏から手をまわしてあの男を釈放するのは、取り引きが成立してからだ。
むろん、あの男がすんなり取り引きに応じるとは思えないが。
でも…………
(出れないよ、僕の言うことをきかないとね)
画面に目を据えて、恋夜は勝ち誇った笑みを浮かべた。
その目が、ふいにハッと見開かれる。
中警察署の前をうろうろしている、あの華奢な少年は……!
「碧(あおい)……!」
恋夜は、愕然とつぶやいた。
危うく、コーヒーカップを取り落とすところだった。
まばたきして、恋夜は食い入るように画面をみつめた。
間違いない。
碧だ。
恋夜と同じ色の瞳を持つ、美しい紅薔薇の聖騎士…………
(碧がこっちに来てるのか……!)
そして、碧が中警察署の前を所在な気にうろついているということは…………
「計画は変更だ」
小さくつぶやいて、恋夜はコーヒーカップを置いた。
長い睫にけぶった青い瞳に、したたかな光がきらめく。
「サングラスを借りるよ、翔」
テレビを切って立ちあがり、恋夜は軽やかな足取りで高見沢の部屋に向かった。
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