第2章

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「ご褒美」を、まだ高見沢にねだってはいない。 あの男を、あっさり出してやるつもりはなかった。 裏から手をまわしてあの男を釈放するのは、取り引きが成立してからだ。 むろん、あの男がすんなり取り引きに応じるとは思えないが。 でも………… (出れないよ、僕の言うことをきかないとね) 画面に目を据えて、恋夜は勝ち誇った笑みを浮かべた。 その目が、ふいにハッと見開かれる。 中警察署の前をうろうろしている、あの華奢な少年は……! 「碧(あおい)……!」 恋夜は、愕然とつぶやいた。 危うく、コーヒーカップを取り落とすところだった。 まばたきして、恋夜は食い入るように画面をみつめた。 間違いない。 碧だ。 恋夜と同じ色の瞳を持つ、美しい紅薔薇の聖騎士………… (碧がこっちに来てるのか……!) そして、碧が中警察署の前を所在な気にうろついているということは………… 「計画は変更だ」 小さくつぶやいて、恋夜はコーヒーカップを置いた。 長い睫にけぶった青い瞳に、したたかな光がきらめく。 「サングラスを借りるよ、翔」 テレビを切って立ちあがり、恋夜は軽やかな足取りで高見沢の部屋に向かった。
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