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「あの男を留置所から出してあげる。こう見えても、僕、警察に顔がきくんだ」
顔がきくのは高見沢だけど、そこまで言う必要はない。
「……何が望みだ?」
いまいまし気に恋夜を睨みつけて、碧が怒りを押し殺した声で言った。
碧にとって恋夜の存在など、ただ忌まわしいだけなのだろう。
「碧かあの男のどちらかが、僕らの仲間になること。言ってる意味、わかるよね?あの男には花刑を受けてもらわなきゃならないけど。もちろん、花刑を受けても、黒薔薇の刻印が刻まれるとは限らない。でも、あの男なら、きっと妖樹も気に入るよ。綺麗な顔してるもん」
「黒薔薇の王の手下になれって言うのか!?ふざけるなっ!!」
ぶるぶると拳を震わせて、碧は火を吹くような眼差しで恋夜を睨みつけた。
「あっ、額に青筋」
はぐらかすように、恋夜は碧の額を指さした。
「せっかくの美少年が台無しだよ、碧」
「貴様っ!いい気になりやがって……」
たまりかねたようにザッと一歩踏み出した途端、碧は顔を歪めてよろめいた。
何とか倒れるのを防いだものの、辛そうに左腕を押さえ、荒く息を乱している。
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