429人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうそう、恋夜は俺たちみんなのアイドルなんだから」
反対側の隅に座った宮本が、こちらは冗談めかした中にも本音をこめて、上目遣いにちらりと恋夜を見た。
いかにも遊び人風の宮本は、まだ大学生だが、しょっちゅうこのバーに顔を出していた。
「恋夜は、誰の手にも堕ちない。だからいいんだよ。なぁ」
真ん中のスツールに座った坂口が、自分に言いきかせるように言って、しかし言葉とは裏腹に未練たっぷりの様子で恋夜をみつめた。
「固いよね、恋夜は。こういう業界にいる割にさぁ。よっぽど惚れた女でもいるのかな」
宮本と坂口にはさまれた荒木が、ため息まじりに言って、探るように恋夜をみつめた。
「まさか。そんなんじゃないですよ」
恋夜は、はぐらかすようにクスリと笑った。
バーの間接照明が、そのあでやかな美貌を妖しく濡らしている。
最初のコメントを投稿しよう!