第3章

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「宮本さん、その獣って、どんな姿をしてるんですか?」 深刻な調子を声や表情に出さないように気をつけて、恋夜はさり気なく探りを入れた。 「それも、人によって言うことがマチマチだな。狼のような姿をしてるって言う奴もいるし、熊に似てるって説もある。人間の姿だったって奴もいるし、口が耳まで裂けてるとか、脚が6本あるとか、新幹線より速く走るとか、いろいろ言われているけどね」 「都市伝説なんて、そんなものさ」 肩をすくめて、荒木が知ったような口をきいた。 「それより、例の事件、早く犯人が捕まるといいね」 「ああ。物騒な世の中になったな。怖くて、夜もおちおち歩けやしない」 「まあ、今のところ、犯行の範囲が限られてるからね。夜はあの辺りに近づかなけりゃいいさ」 客たちの話題は、ここ半月巷(ちまた)を騒がせている、通り魔事件のことに移っていった。
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