第3章

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宮本の話を聞くまでは、恋夜もむしろそっちの方が奴の仕業ではないかと思い、気になっていたところだ。 半月の間に15人……つまり、一日に一人、名古屋市内で人が殺されていた。 被害者は年齢もバラバラで特に共通点もなく、通り魔の犯行と思われていた。 犯行の手口が同じことから、警察は同一犯の仕業と見て事件を追っていた。 今のところ有力な手掛かりはなく、捜査は難航しているようだった。 犯行がいずれも深夜……午後10時から12時の時間帯に行われているため、深夜の外出は極力控えるよう、警察と市が呼びかけていた。 体中を深く切り刻むという残酷な手口と、凶器は手術に使われるメスのようなものと警察が発表したことから、「21世紀の切り裂きジャック」と騒がれていた。 だが、19世紀末にロンドンで起きた切り裂きジャック事件は、優秀な外科医でなければ決してなし得ない絶妙な切り口だったが、名古屋市で起きている通り魔事件は、めちゃめちゃな切り方を犯人はしていた。 まるで激しい憎悪のままに被害者をメッタ切りにしたかのような、無数の深い傷が遺体には残されていた。 犯行は今のところ、港区の金城埠頭周辺に限られている。
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