第3章

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宮本の話を聞いて、恋夜の中でひとつの仮説が形を取りつつあった。 行って、確かめなければ。 明日は、定休日だ。 恋夜はちらりと琴音の顔を脳裏に思い浮かべた。 あれから一度、琴音に会って、互いの携帯番号とメアドを交換していた。 奴について何かわかったらすぐに連絡するようにと琴音に言われていたが、むろん恋夜は、琴音に連絡をとるつもりなど毛頭なかった。 琴音だって、本当に恋夜に連絡をくれるかどうか、怪しいものだ。 自分ひとりで奴を捕まえて、手柄を独占するに決まっている。 ……でも。 (琴音には奴を捕まえられないよ。琴音には、奴の警戒心を解くことはできない。でも、僕にはできるよ。だって……) 「同族だもん」 独りごちた恋夜を、荒木が不思議そうにみつめた。 「え?何がだい、恋夜?」 「いえ。ただの独り言です。気にしないでください、荒木さん」 小さく微笑して、恋夜は香り豊かなブランデーを口に運んだ。
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