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殺気立った相手を前に剣を正眼にかまえても、恋夜の心は波ひとつ立たず、静かだった。
恋夜は、まだクレイジー・ブルーの血が覚醒していないのだ。
それでも、剣の腕はかなりのものだと自負していた。
「……オマエ……何者ダ……?」
どこかたどたどしい低い声が、結空斗の口から漏れた。
獣性が鎮火して、理性が戻ったのだろうか。
恋夜はホッとして、切っ先を地面に向け、一歩、相手に近づいた。
「僕は恋夜。結空斗と同じクレイジー・ブルーだよ。話があって来たんだ」
「……敵……殺ス……」
低く身がまえて、呻くように結空斗は言った。
「違う!敵じゃない。僕は……」
言いかけて、恋夜は言葉を呑みこんだ。
不気味な笑い声に気づいたのだ。
掠れたような含み笑いは、結空斗の口から漏れていた。
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