第3章

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風の抵抗すら感じさせない速度で、結空斗が闇を裂いて疾走してゆく。 だいぶ引き離されたことに焦りながら、恋夜も懸命に走った。 やがて、右手にこんもりした低い丘が見えてきた。 花の山だ。 結空斗は花の山を素通りして、なおも駆けてゆく。 すぐに、円筒形の巨大なシルエットが見えた。 オランダ風車だ。 闇の中にひときわ黒々と、オランダ風車の偉容がそびえていた。 オランダ風車の前まで来ると、結空斗は足をとめてふりむいた。 あれだけ全力疾走したのに、息ひとつ乱していない。 「……オマエ……敵……殺ス……」 獣(けもの)じみた声で呻いて、結空斗は剣をかまえた。 しなやかな長身の肢体から殺気が迸り、氷の壁のように恋夜を打った。 恋夜も、静かに剣をかまえた。
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