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風の抵抗すら感じさせない速度で、結空斗が闇を裂いて疾走してゆく。
だいぶ引き離されたことに焦りながら、恋夜も懸命に走った。
やがて、右手にこんもりした低い丘が見えてきた。
花の山だ。
結空斗は花の山を素通りして、なおも駆けてゆく。
すぐに、円筒形の巨大なシルエットが見えた。
オランダ風車だ。
闇の中にひときわ黒々と、オランダ風車の偉容がそびえていた。
オランダ風車の前まで来ると、結空斗は足をとめてふりむいた。
あれだけ全力疾走したのに、息ひとつ乱していない。
「……オマエ……敵……殺ス……」
獣(けもの)じみた声で呻いて、結空斗は剣をかまえた。
しなやかな長身の肢体から殺気が迸り、氷の壁のように恋夜を打った。
恋夜も、静かに剣をかまえた。
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