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恋夜は16才……けれども、19才と偽って働いていた。
恋夜が大人っぽく見えるわけじゃない。
華奢な体躯も甘さを残した顔立ちも、16才の少年そのものだったが、常連客たちは誰一人として、そのことにふれようとはしなかった。
みんな、恋夜を失いたくないのだ。
万一、警察に通報されたとしても、高見沢が裏から手を回してくれるだろう。
高見沢は、いろんな業界に顔がきく。
この小さなバーだけじゃなく、エステサロンやネットカフェなど、高見沢はいくつもの店を経営していて相当羽振りがよかった。
「う~、寒い。また雪だよ。今年は雪が多いね」
大げさに身震いしながら、常連客の井端が店に入ってきた。
一瞬開いたドアの向こうに、宵闇に降る白い雪が見えた。
白い薔薇が無数に舞っているようなその情景が、恋夜にある光景を思い出させ、軽いめまいを覚えた。
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