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店の閉店時間は、深夜の2時。
だが、雪が本格的に降ってきてかなり積もり始めたため、客足が引くのは早かった。
後片付けを済ませ、所在なくスツールに腰掛けていた恋夜は、店のドアが開く音に敏感に反応した。
黒いトレンチコートを纏った高見沢が、店の入口に端然と佇んでいた。
深夜なのに黒いサングラス……これも、いつものことだ。
サッと立ちあがって駆け寄った恋夜を、高見沢は探るようにみつめた。
「どうした、恋夜」
胸中に逆巻く漠然とした不安をうまく言葉にすることができず、恋夜は頼りなく瞳を揺らして高見沢をみつめた。
黒いサングラスに、やや蒼ざめた恋夜の顔が映っている。
その顔はひどく幼く、見捨てられた子犬のように見えた。
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