M.C.4th

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M.C.4th

九条先生は顔面蒼白になり、ゆっくりとその場に座り込んだ。 「どうした!?何があった!?」 階下から現れたのは立原だった。 咄嗟に立原から目を逸らしたが、視線の先には倒れている女生徒。 思わず表情を強ばらせたが…、九条先生の叫び声で我に帰れたのか…。 先程は気が付かなかった、上靴の踵部分に目が止まった。 東雲…、名前が書いてあるのか…。 東雲…、“しののめ”…。 下は書いていないが、聞いた事のない姓だ。 他学年である事は間違い無い…。 「東雲!?おい…!!東雲!!」 立原が倒れている彼女を見付け、俺を突き飛ばして駆け寄ろうとした。 「立原先生!!触っては駄目!!」 立原と一緒に来てたのか…、ナナちゃん先生が大声で叫んだ。 「立原先生は救急と警察に連絡を。  九条先生は脈をとって下さい。  他の生徒や、教員の方にも、絶対に近付かせないように。」 …普段は脳天気なナナちゃん先生が、冷静な態度で他の先生に指示した。 「この子の担任の先生は?」 「確か…、久住(ひさずみ)先生です。」 答えたのは立原だった。 「真実君…、どうしてこんな所に?」 「ナナちゃん先生…、俺…。」 ナナちゃん先生が険しい表情で、俺にそう聞いてきた…。 だが俺は言葉に詰まり、何も言えなかった。 「…兎に角、こを絶対に動かない事。  先にあの子を見付たのはどっち?」 「…それは、…俺です。」 俺がそう告げると、ナナちゃん先生は目を閉じ、少し考えてから…、 「ここで待ってて、すぐ戻るから。」 と言って、階段を降りて行った。 その時、校内にチャイムの音が響く。 それと同時に、教室にいた生徒達が扉や窓からこちらを覗き込んだ。 「九条先生…、東雲をお願いします。」 立原は九条先生の肩を叩き、他の教師達に事情を話に行った。 九条先生が東雲の手首に触れた。 目を閉じ、静かに無事を祈る様に。 暫くして九条先生はゆったりと立ち上がり、 生徒達を教室から出さないよう、立原と共に動き回り始めた。 …それはつまり、この女生徒…、東雲に救急処置が必要無い状態…。 事切れていると…、いう事だ…。 俺は見ている事しか出来ず…、 ただ、その場に立ち尽くすだけだった。
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