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C.I.5th
「それじゃあ、教室に戻る。
有り難う、色々参考になった。」
「…あんまり無茶したら駄目よ?」
俺は足を止め、振り返った。
「俺は先生を疑ってるんだ…。
気に掛けて貰う価値なんて無い…。」
信じてくれた人を疑う、恩知らずな奴だ。
きっと…、死んだら地獄に堕ちるな。
「前に言ったでしょう?
あなたは私の生徒なの…。
塚原君の事は私も知ってるから、
止めなさいとは言わないけど…、
危ない事だけはしないようにね?」
「…先生が犯人で無い事を願ってる。」
俺はそう言って、保健室を後にした。
…胸の奥に、軋む様な痛みが走る。
後悔の念から来る、酷い自己嫌悪…。
その場に突っ伏したくなる程の嘔吐感。
話を聞いても、何の進展もなかった。
悪戯に、九条先生を呵責しただけで…。
俺も…、他の奴等と同じだ…。
根拠もなく、他人を犯人扱いして…。
なんて破廉恥な奴なんだ…、俺は。
「真実…?どうしたの…?」
愛衣が後ろから声を掛けてきた。
話を聞き終わるのを、待っていたらしい。
「…愛衣、授業はどうしたんだ?」
「…もうとっくに終わってるよ?」
そんなに時間が経ってたのか…。
終業のチャイムに気が付かないとは…、余裕が無い証拠か…。
「…大丈夫?真実…,辛そうだよ?」
「何でもない…、ただの自己嫌悪だ。」
信頼に対して、嫌疑で返した自分に…。
「…真実、無理はしないで?
辛かったら…、ゆっくりでもいい。
休んだっていいし、止めたっていい。
誰も真実を責めたりしないから…。」
あぁ、何て甘い誘惑だろう…。
誰も疑わなくて済むのなら…。
もう…、全てを投げ出したくなる…。
他の誰かに犯人扱いされても…、一向に構わないと思えてくる…。
「でも…、駄目なんだ…。
もし…、ここで立ち止まったら…、
俺は一生…、自分を許せなくなる。
だから…、這ってでも進しかない。」
「…止めたくならない?」
「何があっても、絶対に止まりたくない。
もし俺が立ち止まりそうになったら…、
愛衣…、俺を無理矢理にでも…、
引き摺ってでも止まらせないでくれ。」
…愛衣は、俺を自分の胸に抱き寄せた。
「私が真実を支えるから…、
真実は、自分のやりたい事をして…?
私は…、真実に付いて行くから…。」
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