23772人が本棚に入れています
本棚に追加
.
「でも、縁を感じたから、きっとあの子のことをサポートする日が来るような気がするよ。
デザイナーになりたいって言ってたし……」
楽しげにそう言う樹利に、可愛は苦しさを感じて俯いた。
「……また、話を戻しちゃうけど、怒らないでね。
樹利の隠し子騒動事件を聞いて私、心のどこかで『その子が本当の子供だったら良かったのに』って思っちゃった。
私は産めないでしょう?
今後、誰かと子供を作られるのはやっぱり嫌だけど、私と出会う前の過去のことなら諦めもつくし……」
そう漏らすと、樹利は「ばか」と可愛の頭をクシャッと撫でた。
「なんていうか、俺は……何でも『縁』が世の中を形成していると思うんだ。
赤の他人の俺達が出会って家族になれたのも縁なように、これから始める仕事の為にフィレンツェに来ているのも何かの縁で……。
子供も縁だと思ってる。
すべての縁は、自分に必要があれば引き寄せてくれると思うんだ。
だから縁があったりなかったりすることに嘆いたり悲しんだり苦しんだりしないで、自然に身を任せて楽しく過ごすことが一番だと思ってる。
……なんて言っていいか分からないけど、今まで生きてきて一番嬉しいのは、可愛に出会えた縁なんだ。自分の運命に感謝してるよ」
強い口調でそう告げた樹利に、また目頭が熱くなったので、可愛はグッと堪え、そっと寄り添った。
「ありがとう……」
最初のコメントを投稿しよう!