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マリクの鼻と口を押さえる手に力が入る。わからないかとも思ったがしっかりばれていたようだ。大分息も苦しくなって、ギブアップの意味を込めてマリクの腕をパシパシと叩けば、一層締め上げられた。
本気で落ちそうになった頃にルイーザさんの「ご飯できましたよ。」という一言でようやく解放された。
膝に両手をつき、うつむき気味で大きく息を吸い込む。心臓が必死に全身へ酸素を送り出す。あのオヤジ、自分を早死にさせるつもりか。生物の心臓の拍動の回数は決まっているんだぞ、こんなところで無駄遣いさせるな。
「クラウドさんも食べてくださいな。」
氷の入ったグラスを持つルイーザさんが席に着くよう促す。大きめの木の椀の置かれている席に着く。その隣に娘さんがやってくる、
「アリアちゃーん、ぱぱのお膝においでー。」
というマリクの声をガン無視で自分の膝によじ登る。
「アリアね、アリアってゆうの。おにいちゃんはクラウド?」
向かい合うよう居座ったアリアが名乗る。自分のことを言うときに右手の人差し指が自分の鼻を指す姿がまた可愛らしい。幼女っていいな。
「じぶ…俺は、黒…ラウディオ・ヴァリニャーノ。」
危ない危ない、黒崎奏と名乗るところだった。何とか誤魔化したが、大丈夫、かな?
「えっと、クロラウディーバイニャーオ?」
誰だそれは。自分の名前を復唱したつもりのようだが、全く別の名前が出来上がってしまっている。
「クラウド、だ。アリア。」
にやにや顔をしたマリクがアリアに言う。
「クラウド!」
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